丹足には基本となる「型」とは別に力の伝え方の鉄則とも言うべきものがあります。それが「フワ・グ・フワ」です。教本に詳しく書いていますが、この「フワ・グ・フワ」には3種あり、この3種のフワ・グ・フワを使いこなせるようになるに伴い施術効果はもとより、踏み相手の信頼をもより確実に獲得できるようになります。
先日の4月の段級試験では、前回お伝えしたとおり実質的に3級以上の得点を獲得した道場会員さんが続出しました。これは道場師範としてうれしい誤算でありました。3級を獲得するということは「丹足の基本形」を体現できたということです。思っていたよりも早い段階で多くの人にこういう成果が現れたことは何よりもの手ごたえとなりました。
しかしその一方で、段級試験を通して如実に現れた課題があります。それは型の習熟に対してフワ・グ・フワの体得についてはまだ入り口に立っているという事実です。とりわけグが今後の大きな課題であることが判明しました。
グとは、文字通り相手の体をグッと踏むことですが、筋力を使って強く踏むという意味では決してありません。むしろ例えグであっても、踏む為の筋力は極力使わないのが良いのです。踏む筋力は限りなくゼロにしながら、それでいて深く踏み込むという矛盾のような踏み方。おしりや内もものような厚い筋肉層の奥深くまで、楽に自分の踏み足を届かせることができる、これが丹足のグの真骨頂といえます。
踏む筋力をつかわないで、どうやって奥深くまで踏み込めるというのか。世間一般の常識では理解できないところに丹足の奥深さがあります。しかし事実踏み込めるのです。私が涼しい顔をしてズブッと奥深くまで、時に踏まれている人が悶絶するほどにまで踏んでいる姿を皆さんは見られたことがあると思います。踏む相手が力士でもプロレスラーでも同じ、何の問題もありません。あれがグなのです。本当のグには際限さえないといえます。
グはどうすれば習得することができるのか。3級から1級まではこのグに対する挑戦となります。もちろんフワも同じです。フワの延長にグがあり、グの収束としてフワがあります。フワもグも本当は同じものなのです。本当のグができる人こそ本当のフワもできます。つまりフワ・グ・フワをどう身に着けるか。その挑戦だと認識しましょう。
「型」は日々丹練をし、毎月稽古で反復練習をすれば身につけることができます。ある意味とてもシンプルな取り組みです。一方の「フワ・グ・フワ」は、自分の心と向き合うことが必要になります。「強く踏む=よく効く」という固定概念からいかに自分を脱却させることができるか。パワーではなく相手との協調によってほぐすという感覚を身につけることが出来るか。どうやってハラの重心コントロールの精度を高め、それをどう足に伝えていくか。
ここから、この3級から上の世界を難しくないよとは私は言いません。井本トレーナーもブログで書いておられましたとおり「丹足は甘くない」という現実に打ちのめされる世界の始まりかもしれません。しかし粘り強く取り組むことで「こういうことか!」という感動の瞬間も出てくるかもしれません。そんな世界を体感してみたい、そういう人にとって丹足は終わりのない楽しみを与えてくれることでしょう。
平成30年5月
千照館師範 三宅弘晃
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